4つの最後の歌 〜R.STRAUSS〜


ヘルマン・ヘッセ

薄暗い墓の中で
長い間 夢をみていた
おまえの樹々と青空を
おまえの薫りと小鳥の歌を

今 おまえは姿を現して
あでやかに輝いている
光を降りそそがれて
奇跡のように 私の前に

おまえも私を見いだして
やわらかに誘いかける
おまえがそこにいるという喜びに
私はからだを打ち震わせる

九月
ヘルマン・ヘッセ

庭園が悲しみに沈む
冷たく花に降りそそぐ雨
夏はおののきながら
静かに最期の時を迎える

アカシアの高い枝から またひとひら
葉が金色の雫のように散ってゆく
死にゆく庭園の夢の中で
夏は戸惑い 力なく微笑む

しばらくはなお薔薇の花のもとに
夏はとどまり 憩いを望む
やがて 夏はゆっくりと
疲れたその両目を閉じる

眠りにつくとき
ヘルマン・ヘッセ

この一日に 私は疲れてしまった
私の心からの願いは 星の輝く夜が
私をやさしく迎えてくれることだ
眠くなった子供を抱きとるように

手よ、すべての仕事をやめよ
頭もすべての思いを忘れるのだ
私の感覚は 今やすべて
眠りの中に沈もうとしている

そして魂は 思いのままに
その自由な翼を広げる
夜の魔法の世界に
深く無限にとどまるために






夕映えの中で
ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ

私たちは手をとりあって
苦しみや喜びの中を歩いてきた
そして今 さすらいの足を止め
静寂の大地に安らう

まわりの谷は沈み
空はもう暮れはじめた
二羽のひばりだけが なお空に舞っている
もやの中で 夢を追うように

こっちにおいで、ひばりはさえずらせておこう
もうすぐ眠りの時が近づくから
二人きりの孤独の中で
私たちは互いにはぐれないようにしよう

おお、広々とした、静かな平和よ!
夕映えの中に こんなにも深くつつまれて
私たちはさすらいに疲れたんだ ------
これが
あるいは 死なのだろうか



日本語訳:河野健太郎(YPO:Vc)


本サイト内容の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Kentaro KONO All rights reserved