YPO 私と横フィル(5)

「おやぢ」と横フィル

 先日、某湖のほとりで演奏会に向けての合宿があり、つい最近入団したヴィオラM嬢の”足がない”――彼女はけっして幽霊ではない;念のため、という言葉を耳にした私は勇気をふり絞って”それでは私が……”と申し出たのですが、どういうわけか回りにいたほとんどの女性陣が猛反対。まるでオオカミの如くに扱われ、楽しいはずの彼女とのドライブはまことにはかなき夢と散ったのでした。
 そう、不肖私、哀しき”おぢさん”――当団では固有名詞;けっして”変態おやぢ”とか”セクハラおぢさん”などと呼ばないように、なのです。かれこれ一昔前”たのもう”と当団の門を叩いたときに、隣にいたA嬢やH嬢の後ろに手を伸ばしたのが……いけなかった。当時女子大生だった彼女たちの白く冷たい視線は、明らかに私を”おやぢ”と認定したのです。もっともA嬢はその後”慣れた”と実に慈悲深いことを言ってくれましたが、はい。
 かくて月日は流れ、彼女たちも妻になり母になり、私はと言えば相変わらず”おやぢ”をしておりますが、最近名前に相応しい”品格”が漂い始めたとか。えっ、ところでお前は誰だって。自分じゃ恥ずかしいので職場のお嬢ちゃんたちの声を。
 ”えーっ、やだーっ、二枚舌のオーボラ吹きだって”――なんじゃコリャ!

庵にて(M)
(第37回定期演奏会 パンフレットより)
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