二年半前、横浜のオーケストラってどんな感じなのだろう、と思っていた。九州から越してきて数ヶ月、ふとしたきっかけで知った横フィル――。「都会の人」たちに馴染めるか不安もあった。「何も問題を起こさぬよう、とにかくおとなしく静かに、楽器を吹くことだけを考えよう……」、そうかたく心に誓って入団した。
しかし、そんな日はいつまで続いたのだろう……、今では「セクションリーダー」(いわゆるお世話役なのですが)なんてのをやりながら、当初の思いとは裏腹な状況に陥ってしまっている。不義理をしている郷里の友人に「何がそんなに忙しいのよぉ〜」ととがめられ、「うーん、オケの用事がねぇ」と言うと、友人は呆れたようにひと言、「あんた、どこへ行ってもそんなこと、やってるのねぇ……」どうやら、私って同じことばかり繰り返しているようなのだ。しかしちょっぴり大げさかもしれないが、専業主婦の私にとって横フィルは、社会と接する唯一の場所だったような気がする。ついつい、家庭を顧みず熱中し過ぎて娘に淋しい思いをさせたり、周囲に迷惑をかけてしまったりしたことも多々あった。
そんな私だが、またもや主人の転勤のため、この春から名古屋に移り住むことになった。突然訪れた横フィルとの別れ。今回の演奏会をもって、さよならしなければならないのだ。「転勤族の妻」という運命を恨みたい
気もするが、だからこそ、横フィルのみんなにも出逢えたのだ、そう考えると、とてもフクザツな心境になってしまう。
アマチュアのオーケストラは、テクニックはプロのオーケストラにはかなわない。しかし、私は「気持ちが音を作る」という恩師の言葉を信じたい。みんなでひとつの音楽を作り上げていく喜びは、何物にも代えがたい。
みんなの心がひとつになった時、オケはびっくりするような魅力的な音を奏でる。その瞬間を味わいたくて、私はクラリネットを吹き続けているのかもしれない。そして、そんな音と響きを、聴いてくださる人たちの心に届けたい。
この二年半、横フィルのメンバーと何百通ものメールや電話などを通じて、いろんな思いを語り合ってきた。私は、横フィルのみんなの純粋さが大好きだ。知らない土地、母親になり不安だらけで再スタートした演奏活動だったが、本当に楽しく充実した二年半だった。
いつの日か、また関東に戻って来ることがあるならば、是非また仲間に加えてもらいたい。もし、そうなった時、「あんたなんか、願い下げよ!」と言われないよう、精一杯腕を磨いておこうと思う。
本日ご来場の皆様、これからも「横フィル」を応援し続けてください……ね。
|