YPO 私と横フィル(16)

波のように…
A.K(Perc.)

 二年前。結婚してやってきた横浜。名字が変わり、環境が変わり、まるで新入生のように期待と不安でいっぱいだった頃。
 そんな時、チェロをやっている夫と一緒に入団したのがこの横フィルです。
 大阪出身の私は、当初団員のみんなに少々怯えていました。三年間のブランクがあり、演奏面にも心配がありましたが、音楽以前に言葉の問題を乗り越える必要があったのです。「関東のコトバ」で話しかけられると、とても他人行儀に感じ、また自分も本音を出せず、私は本当にここでやっていけるのだろうか、と真剣に思ったものです。そんな私を、浜に打ち寄せる波のように、時にやさしく、時に厳しく包んでくれた横フィルのみんな。(そして気づくとすっかり沖まで来てしまいました)このオケのおかげで私は横浜が大好きになりました。
 私の担当は打楽器です。オーケストラの打楽器は休符がとても多く、ここぞと言う時に登場します。だから一打にかける思いはかなりのものです。そして、その一打が音楽を台無しにするか、感動を生むかの瀬戸際
だったりします。ミスは許されないし、理想に近づけない時は本当に辛く、逃げ出したくなったり、音楽とは本来楽しんでやるべきものなのに、どうしてこんなに辛いのか?と悩み苦しむこともしばしばです。
 それでも横フィルで音楽を続けたいと強く思うのは、音楽が好きだという気持ちを楽器にのせて表現したいから、そして、他の楽器と音が重なった時の感動が本当に素晴らしいからです。ティンパニを叩いていると、
時にオーケストラ全部の楽器を鳴らしているような感覚になります。打楽器を選んで良かった!と思う瞬間。不思議で、魅惑的な感覚です。
 それはきっと、このメンバーと一緒だからなのでしょう。音楽に対する姿勢は真摯で、とても練習熱心。そして音楽を離れても、なんとも個性的で魅力的なのです。そうやってひとりひとりのいろんな魅力を発見 しながら長い時間をかけて音楽を作っていく、その過程で、感動を何倍にも増幅させる要素が生まれてくるように思います。
 稚拙な部分も多々ありますが、音楽に対する情熱が観客のみなさまに伝わりますよう、願いを込めてみんなと舞台に立ちたいと思います。横フィルの波がみなさまを懐深く、感動の一瞬にお連れできるように……、難しいことは抜きにして、ああ、いい演奏だな、と感じていただければ嬉しいです。

(第48回定期演奏会 パンフレットより)
閉じる